4/30/2008

デゲレオタイプとフィラデルフィア

今日は朝からLibrary Company of Philadelphiaでキュレーターの人と打ち合わせをする。

今回初めて会うSarah Wetherwaxという方で2週間ほど前に彼女の方から連絡をしてきてくれた。去年の秋に行ったTintypeのポートレートセッションで同僚のキュレーターの人がスタジオを訪れてくれたのがきっかけである。

打ち合わせの内容としては来年の秋にDaguerreian Societyが フィラデルフィアで会合が予定されていてそれと同時期にLibrary Companyはデゲレオタイプのショーを行おうとしている。Library Companyでは自分のコレクションがある程度あり他の美術館から借りるデゲレオタイプを使ってショーを行いたいということである。そこでお互いに協力をして何か面白い企画イベントができないかということである。

いかにフィラデルフィアのギャラリーや美術館と足取りを揃えて街全体でデゲレオタイプに関連するイベントを行うかということを話す。僕の所ではコンテンポラリーのデゲレオタイプを見せようと考えている。他の場所も巻き込むことによってもう少し写真に接する機会を持ってもらえるので はないかと考える。そんなことをSarahと2時間ぐらい気軽に打ち合わせをする。

ダゲレオタイプと言えば前々からRobert Corneliusという人のことをいろいろ調べている。Corneliusはフィラデルフィアで1840年からほんの2-3年ほどフィラデルフィアでダゲレオタイプのポートレートスタジオを開いていた人である。写真に携わっていた期間は短いのだが彼が残した業績はかなり大きい。

フランスが世界各国にデゲレオのプロセスの詳細についての発表をしたのは1839年の8月である。このニュースは意外に早く世界を巡りフィラデルフィアの新聞にもすぐに 紹介された。そこでフィラデルフィアの造幣局に勤めていたJoseph Saxtonという方が9月には造幣局の建物から見える風景を撮るのに成功している。この写真はアメリカで最も古く現存するデゲレオタイプとしてLibrary Companyの隣にあるHistorical Society of Pennsylvaniaに残されている。

CorneliusはSaxtonからデゲレオタイプのことを教わり自分で研究を始めた。ペン大学の化学教授と一緒にアイオダインを加えることによって露光時間を1分以下に短くすることに成功するのである。そして同じ年の秋に一番最初に撮ったと言われているのがこの写真で自分のことを写したセルフポートレートである。これは今ではアメリカで最も古いポートレートの写真とされている。

当時のフィラデルフィアはデゲレオタイプに対して積極的に技術を取り入れ完成度を高めて行った。1840年の春にはCorneliusのスタジオを始め2-3件のデゲレオタイプスタジオが既にあったらしい。フィラデルフィアの技術の高さを裏付ける話としてデゲレオタイプを広める為にフランスから送られて来たデゲレオの使者は フィラデルフィアの写真家の話を聞いていて立ち寄ることをやめたようだ。

僕が一番興味があるのはどうしてポートレートを撮ったかということである。デゲレオやタルボットなどの写真を見ているとどうしてもStill Lifeの写真が最初にでてくる。もちろん技術的な限界という点から撮られたのであろうがCorneliusは最初から違っていた。どうして最初にカメラを向けたのが人物だったのであろう。

この写真を見る為にDCにあるLibrary of Congressを4年前ほどに訪ねた。この写真の裏には"The first light Picture ever taken. 1839"という刻みがあるらしく僕はどのような文体で書かれているのがとても興味がある。手書きでかかれているのだが彼の書体を見てみたい。これを見ることによってかれにもう一歩近づけるような気がしてならなかった。その時には裏までは見せてと頼む勇気はなかったが今でも想像を巡らしている。

キュレーターのCarol Smithさんが丁寧に彼のセルフポートレートを始めCorneliusのデゲレオタイプを見せてくれた。元々はフィラデルフィアにいたコレクターの手にあったものだったのであるが彼女がなくなった時にLibrary of Congressに寄付されることになった。 こんな写真がフィラデルフィアに残っていてくれたらと思うのが…。

密かに今回の大きな目的として今回の関連のショーでこの写真をフィラデルフィアに持って来きたいということがある。

4/25/2008

これからの作家/作品

Kevinと昼食から帰ってくるとメッセージが留守番電話に残っていた。Susanという女性からの電話であった。

彼女は面識がないのだが一ヶ月ぐらい前にワークショップがNJにある写真センターで行われそこで彼女の作品を見る機会があった。彼女の作品がとても気に入ってスタッフの人に僕の方に連絡をしてくれとカードを渡してきた。Project Bashoのギャラリーで作品を見せて欲しいというのが僕の思ったところであった。

少しずつではあるがこのような何下もない機会に目に留まった作品を見つけるとこちらから積極的にコンタクトを取り始めている。これからギャラリーで発表していく作品を集めているのである。

気に入るものに特に決まったものはないのだが一番重要なのはプリントなどを含めての「クラフト」と自分で閉じ込めようとしている「感性」みたいなもののバ ランスがとれている作品を探している。後欲を言えばプリントを見たときにプリントとしての「愛らしさ」みたいなものがあると余計いい。

とても抽象的に聞こえるが実際にそのような作品に出会うとその時に自分が探しているものがとてもはっきりして納得がいくのである。そんな作品を見た時にあー写真をやめないで長く関わってきてよかったなと思うのである。

ぼくたちのギャラリーでは個展としてのショーを行うことをあまり考えていない。写真家一人の作品を見せるよりも二人ぐらいの作品を組み合わせていくことに興味がある。そうすることによってほかの角度から写真家の作品を理解できたり写真の役割や利点みたいなものを提示しようと思っている。つまりこのように新しい作 品を見つけた時に頭の中でどの写真家の作品と組み合わせるのかを考えるのである。この作業がとても楽しくて仕方がない。

すでにこのような感じで今まで何人か声をかけてきている。Project Bashoピンホールやガムプリントのワークショップを行っているScott McMahonに声をかけた。前々から彼の作品を見せたいと思っていた。一緒に彼の大学時代の先生であるSarah Van Kurenの作品を見せたらどうかと思っている。彼にしてみれば彼女はとても影響を受けた作家であるしSarahにしてみればScottは一番彼女が教えたものを吸収してくれた生徒の一人であろう。二人の作品を見せることによってその作家同士の影響みたいなものを見せることができたらと思う。

APUGのギャラリーで何人かの人に声をかけている。12x20を使って夜の写真を撮っているMatt Magruder 。彼は他にも廃墟の写真などを撮っているがこの夜のシリーズが一番面白いと思う。最近声をかけたGene Laughterという人でブロムオイルの作品を作っている。APUGで見る限りイメージとしてのまとまりがあまりないのだがこの辺はセレクションする時になんとかうまくまとめてみたい。

他にも僕の知り合った人で作品の発展を見てきた人もいる。メイン州に住んでいるGaryはAndreaのワークショップを一緒に取った時からの知り合いである。彼は自分のビジネスを売ってから写真活動だけをしながら毎日を過ごしてきている。といってもコマーシャルなものを撮っている訳でなく真剣に作品作りをしてきている。

前から興味があるのは自分の家族を取り続けた作品である。彼は離婚をしてから家族とは離れて住んでいてたまに二人の息子と時間を過ごす。その機会がある時にこの息子たちの写真を撮るのだがこの写真がとてもいい。今ではWet Plate Collodionでガラスネガを作りそこからシルバーのプリントを起こしている。最近見たものに一番最初にギャラリーで行ったFriends of Project Bashoショーで見たものがある。自分の息子を撮ったものなのだが彼の胸に残っている傷を上半身裸でポートレートを撮っている。目をつむっている息子の表情と胸にある傷そしてコロジオンによってできている表面の波みたいなテクスチャーがとてもうまくかみ合っている。

何せ写真をたくさん見ているのだがこのような作品に出会うことがあまりない。なのでギャラリーを活用してこのような作品を発表していきたい。

4/17/2008

AIPADとNYツアー

土曜日にNY出行われているAIPADに生徒を連れて行ってくる。今回はcollotypeのレクチャーをしに来てくれたJames HajicekとパートナーのCarolも一緒に同伴することになった。レクチャーの手伝いをしてくれたOlgaも一緒に来た。

AIPADはNYで毎年行われるイベントで世界中から写真のギャラリが集まり作品を見せ販売する場である。ここにくると毎年の写真の傾向やはやり、そして本でしか見れなかったようなものまで見ることができる。毎年生徒を連れて写真を見に来る。やはりプリントを見ることができるのは一番の勉強になる。

今回のショーはブースの幅が広くなっているようで大きな作品を見せれるように考慮しているらしい。さすがに前々からのはやりとしてあるが大きな作品は今でもよく売れているようだ。そして何よりも驚くのがブースの値段である。小さいブースで200万円弱そして大きなブースなどになると300万円以上になる。お金の動いている規模にはっきりいって毎回のことだが驚かせられる。

今回のショーで一番気に入ったのはFrederick Sommerのプリントである。いくつかのギャラリーが出しているものを見たが気に入っているのは紙を切り取って幾何学的な形を作っているものがある。彼のプリントはグレーの快調がとても豊富できれいだ。こんなものをプラチナで作ったらどうかなどと考える。さすがプリントがきれいなだけに値段もはる。$45,000という値段がついていた。

JamesとCarolが一緒に来たということでいろいろな人に紹介をしてもらう。会場に入ると早速JamesとCrarolは眼鏡をかけた白髪の男性の人と話をし始める。紹介をしてもらうとKeith Carterであった。地元のテキサスの紀行がいかに暑くて湿気が高く過ごしにくいものなのかGeorge Bushの政治と比べて冗談を言っていた。

夜はお決まりの居酒屋で夕食。FOTOSPHEREの柴田さんと栗田さんも参加をしてビールや日本酒を飲みながら焼き鳥を沢山食べた。

4/08/2008

テレビ局の取材

昨日はWHYYというテレビ局がProject Bashoの撮影にくる。WHYYはラジオも放送している公共のテレビ局である。

去年の暮れに新聞に紹介されたのがきっかけで一ヶ月ほど前にプロデューサーの人から電話がかかってくる。Project Bashoの活動を取材したというのである。このプロデューサーはフィラデルフィアで行われてアート関連活動を紹介する短い番組を作成している。電話でどんなものを撮影してみたいのかを聞いてみていろいろアイデアを練ってみる。

最初は今回行われているフィラデルフィア中の写真を撮るGrid Projectの撮影をしてみようなどと提案があったが最終的には暗室での作業やクラスの様子そして僕や生徒たちのインタビューを含めて番組を組むことになった。

毎週月曜日は初心者のクラスが行われていて紹介するにはちょうどいいクラスではないか。やはり初心者のクラスはみんな新鮮みがあり写真を撮るのがとても楽しいときである。僕の方も写真の奥深さみたいなことを紹介できて初心者に教えるのはとても楽しい。

一番最初は僕のインタビューから始まる。ギャラリーをバックに廊下でプロデューサーの質問にいろいろ答える。基本的にはどうやって始まったかどのような活動をしているのかなどということである。

たまに答えに困る質問もでてきた。一番困ったのは最後の質問で「あなたにとって写真とはなんですか?」というものがあった。深く考えずに簡単に答えればいいのだろうが正直言って「何なんだろう?」と一瞬考え込んでしまった。

さすがに新聞のインタビューとは違って少し緊張するものがあった。撮影は録画であるので間違ったことを言えば言い直せばいいと言われていたがどうも口が走ってしまう。最初は何でもないと思っていたのだが時間が経つにつれて緊張がでてきてしまった。次回このような機会があるときはもう少しうまくできるだろう。

暗室で生徒がプリントしている様子を撮影した後に今度はモニターとKevinそして生徒のインタビューをする。モニターのLaurenなどはとても緊張している様子だった。

いろいろな質問があったが中で面白かったのは写真活動が高いかどうかというものがあった。はっきりとしている質問ではなく人それぞれこの質問に答えているのが面白かった。Kevinなどは僕が活動するのに大変なのをわかっているから貸し暗室の値段を押さえていると答えたりもう一人の生徒はクラスをとる前にカメラを買おうかクラスをとろうか悩んだ結果クラスをとり写真の理解がでてきたと答えていた。人の価値観という物がわかるような質問だった。

3時間ぐらいの撮影であったが実際の番組の時間は3分ととても短い。ある意味で写真の行程と似ているものがあり実際に見えないところでの作業というのはたくさんある。どんなものができるか楽しみである。テレビでも放送されそしてウエッブにも紹介されるのでいろんな人が見ることができると思う。