6/10/2008

コーネルキャパ

週末7x17に引き続き日本で撮った8x10を現像している途中にコーネルキャパが亡くなった知らせを聞いた。

承知のようにコーネルは戦争の写真を撮り続けたロバートキャパの弟で写真家である。正直言って僕はアメリカに来る前は写真家としては知らなかった。どちらかと言ったらロバートの陰に隠れがちなのだろうか。彼はこの前のオープニングで顔をだしたICPを創立した人としても知られている。

一度彼のアパートを訪ねたことがある。NYのプリンター、Teresa Engelのアシスタントをしていた時だ。彼女はRobertのネガをほぼ独占的にプリントしていてCornellのネガもプリントしていた。コーネルはキャパの本を出版する時に彼女をプリンターとして抜擢して、その時から一緒に仕事をするようになったそうだ。

彼を訪ねたのは出来上がったプリントにサインをもらう為である。場所はNYのphoto districtから少し離れている所にある高層アパートだ。南向きのアパートに入ると小さな部屋にコーネルと介護の人達がちょうど昼食をしている所だった。とても老いたコーネルが車いすに座っていたのだが僕が知っている写真とは全く違っていてた。

テレサはプリントにサインをしてもらう為に一緒に窓側に座る。彼は声を出そうとしているのだが正直言って何を言わんとするのか僕にはわからなかった。テレサは老人を介護しなれたようにコーネルと会話をしようとしている。

鉛筆を彼の手に渡すがしっかりと握ることすらができない。それなのにもゆっくりとプリントにサインをしていくコーネル。一枚一枚サインをするたびに彼の文字が崩れていく。テレサはそんなことも気にしないように彼を励ましていた。この日は体調があまり優れず4-5枚しかサインをすることができなかった。

テレサが隣の部屋に用を足しにいった間コーネルの様子を見ていてほしいと頼まれ、僕は彼の前の椅子に座った。半分意識が遠のいていくようなコーネルを僕はじっと見ていた。その間お互いに何も口にしなかった。

彼の座っている車いすに横に"Slightly Out of Focus"の本が重ねってあった。単行本で高校の時代に読んで影響を受けた「ちょっとピンボケ」である。その時に初めて英語のタイトルであることを知った。アメリカに来てからこの本のことなどすっかり忘れていたし、どうして写真を始めたなんて考えることさえ無かったように思う。今では実際に読んだ本がどこにあるのかも覚えていない。

しかしこの本がきっかけで高校の時に写真をやり始めたような物である。それから何年も経ったがこのようにNYのアパートの一室でその本を横にロバートの弟、老いたコーネルの様子を実際に目の前で見ている。なんとも言えない不思議な感覚だった。

この間10分も無かったような気がするがアパートの窓から入る南の光はとても暖かく感じた。

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